山奥某所 極寒野営
2014年 1月

今年も明けた・・・年始を過ぎて世間的には稼動しているものの、まだ松の内の頃でいまひとつ調子の出ない一週間だった。
もう先日までの正月の賑わいも一段落して、世の中・世間は通常モードへと戻って来た。

一方、この週末の東日本方面は広い範囲で強い寒波に見舞われるのだという・・・
今シーズンでもっとも強い冷え込みと大雪に警戒・・・との警報を、前夜の天気概況では伝えていたのでした。

そんな極寒が予想される本格的な冬の時期を迎えた今だからこそ、その状況下に独り静かに冬の情景に浸りに行きたいのだ。
無塵・無垢で清冽な白銀の情景、きれいな雪景色に溶け込みたい。

その思い描くような風情に浸る野営を過ごしたい。



さて毎年の年末年始、野営人Yaei Bitoとしての自分といえば・・・

TVなどの芸能事の賑わいに付き合う気はないので、その隙間に放送している自然風景を紹介する映像などを見ている。
さらに燗酒などを啜りながら、これからの野営のあるべき姿とか方向性などを思い描いてみている。

まぁ、そういう風に書いてしまうとさぞ大そうな気難しいイメージだけれど、まったくそうではなく・・・。
いつも寂しげな場所を好んで幕体を広げ、酒を傾けているヘンテコな中年オヤジの戯言でしかないんですよ。(冷笑

前置きが長くなってしまった。(謝
ま、そんなわけでだ・・・
その野営人としての新年の野営始めは、今期最強だという寒気の下に繰り出すことにしたのだった。



現地へ到る途中で、冬季通行止めで遠回りを余儀なくされた。
かれこれもう約10年前から通っているのに関らず、未だに同じことを繰り返して学習能力が無い。笑

ここは麓の町とは全くの別世界・・・雪に囲まれる世界。
ツボ足だと膝上まで入るような、雪が吹き溜まって深い部分がところどころにある。

未踏の雪原・・・とまではいかず一筋の踏跡がある・・・誰かのスノーシューの跡。
雪上トレッキングを楽しんだ跡なのだろう。

ザックに必要な荷を詰め込み一発で場所入りし、この後は明日の朝まで車に戻らない決意をする。
今回は大き目のザックなのであれこれ難しく考える必要は無く、最小限必要な道具を放り込むようにパッキングして背負う。(笑

      

氷の張った中央の部分は一面に雪が覆って雪原状態。
周囲の景色は雪雲に被われてやや重い空気感だが、思った通りの情景で野営に浸れそうだ・・・。

この地は標高約900m程度の高原エリア。
駐車場もあるし、テン場からは遠くなるものの数年前に立て替えられたトイレもある。

ココに来る道すがらの街中の気温表示が1℃もあったが、この野営場所では手元の簡易温度計で見るに−4℃か−5℃程度のようだ。
まだ日の高い昼過ぎの頃合だから、そんなもんだろう・・・この後は、つるべ落としのように気温が急降下するのは何度も経験済み。



水辺より先のほうの本来の水面の上は充分に強固に氷が張っているかに思われたが、雪を踏んでいるとジワッと濡れてくる。
これでもまだ温度の下がりが弱いのかもしれない。

もっと先の氷上の場所で幕営しようと思ったのだが雪が濡れてくるのではイマイチ。
・・・なので、すこし戻ってたっぷり積もっている綺麗な雪のところに幕を張ることに決めた。



冬になると使うこのテント・・・もう何年使ってきただろうか?
もう薄汚くなってボロくなったけれど、まだまだ現役で今のところ使用に問題なし・・・某海外品みたいに保管してるだけで劣化してしまう幕体とは大違いだ。



今回の滞在中に雨は無さそうで、当然TPO的にスノーフライを使う。

・・・そう言えばちゃんと冬用の外張も持ってたんだなぁ(笑
今朝、道具小屋で準備するときに棚の奥に隠れていたのを見逃さずに持ってきた。

     

はい、サクッと設営完了です。
居場所が出来上がればひとまず安心で、あとは野営モードで周囲の風景・情景に溶け込んでしまえばいい。



時折吹雪く。
対峙しようとした正面の峰々は雪雲に隠されてしまった・・・。

冷涼さが極まりない周囲の風景、そこに浸ったこの野営情景がなんとも堪らない。



ザックの中身は全部テントに放り込んだ。
今夜は確実に滞在可能な状況であるので、既にマットにもエアを入れシュラフも広げておいた。

思ったとおり、余計なものを持ってきたくせに些細な忘れ物もしてきた。(笑
まぁ、こんなイージーなレジャーだからそんなミスも問題ない。



些細な忘れ物・・・ジツは極寒の中で飲もうと思った缶ビールもその一つなのだった(凹
明日までは荷を取りに車には戻らないと決めたから、そのビールはおあずけ。

がしかし、こうしてちゃんと他の酒は忘れていないから大丈夫!(馬鹿
ROCKY CUPに注ぐと、周囲にはお酒特有の甘い香りが漂った。

野営を行うこの場所の精霊へ、また野営の神への感謝を敬意を捧ぐためにその酒香を漂わせ、そして共に味わう。
だからこうした野営には、出向いた先の土地や周囲の自然に宿る精霊へ供するため、酒の持参が欠かせない。



う〜〜む!!

この風情・・・

この情景・・・

極寒野営の情緒と味わい・・・極まる。



さて、この地の気温はシンシンと冷え込んでくるのがわかる。
到着したときより空気が刺々しくなった。
手袋で触るポールやアルミペグなどはベタベタとひっつくようになった。



さすがにこの冷気ではガスはか細い炎しか立たない。
それでも、こんな焼き網を乗せてしばらくすると、底面からの輻射熱によってガス缶が温められてそれなりに使えるようになってくる。

・・・それにしてもだ、この絵面(えずら)はなんなのだ?情けない(凹
はたはたの干物が炙られるような、でも冷えるような・・・?

周囲には芳醇な、干物が炙られる香ばしい匂いが漂った。
状況的にミスマッチなのかもしれないが、大いに楽しい酌と肴だ・・・記憶に残る酒肴の味となったような気がする。



少しづつ日が暮れてゆく。
そして気温は更に冷え込む。

寒いのに、それでも辛くない。
いまはこの情景に満足であり、荘厳な時間の流れの中にでも佇んで居るような野営を味わっている。

夕暮れの薄暗い冷え冷えとしたモノクロームな風景。

しかし、いづれここにも生気溢れる木々の緑の季節や鮮やかな赤黄色の季節がちゃんと巡ってくるのだ・・・そのようにして自然というものは生きている。
今、目前にあるモノクロームな風景越しに、そんなことを俯瞰(ふかん)するようにして思いを巡らすのも楽しい。

野営の主役はこの場所の雰囲気、今ここにある自然風景そのもの。
そんな自然風景の中にぽつんと身を置き佇んで情景に浸る・・・それが野営人YaeiBitoの流儀だ。



日が暮れた。
テントの中に入る。

水は周囲の雪で無尽蔵に補給できる。
ここのは素晴らしく綺麗な雪だ。

溶かしてみると全くゴミが無く、濾さずにそのまま使える綺麗さだ。
きっとこの地域周辺の空気も綺麗で、雪もまだ新しいものだからにちがいない。

     

雪を溶かした水でスープ餃子をこしらえる。
冷えた身体に熱いスープは嬉しい。

テントに篭ると他にやることは少ないので、燗酒とこのスープをゆっくりやって寒い夜を過ごす。



しかしまぁ・・・ものの見事に静寂極まる夜。
足元の雪の感触は、極寒時特有のサラサラ状態で乾燥した粉状の雪の感触だ。

簡易温度計ではマイナス10℃程となっている。
ダイヤモンドダストも感じられる気がするけれど、残念ながらごく僅かな感じ。



とても善い晩だ・・・。
このまま寝てしまうには惜しい夜。



目覚めは6時前頃。
まだ暗い・・・。

しばらく身動ぎもせず、シュラフの中でじっとしている。
物音は何も聞こえない・・・風もないようだ。



7時前頃になると、かなり明るくなってきている。
テントの中は、天井からサラサラと粉状の氷粒が舞い降りる・・・幕に着いた結露が凍ってそれが幕の揺れで剥がれ、顔に落ちてくると冷たいのだ。
寝ていたシュラフの表面も白く凍っている部分もある。

こうしてシュラフは多少なりとも濡れる・・・万一、中のダウンが一旦濡れてると乾かすのは大変で、特に連泊で使う場合は尚更だ。
自分の場合は表面生地が透湿撥水性で中身のダウンを少しでも濡らしにくいシュラフを使っていて、代わりにシュラフカバーは省略している。
重量を気にせず持って行ける条件なら、むしろ化繊シュラフのほうがラフに使えて楽だと思うときもある。

    

ほぼ快晴の朝・・・キンと冷え込んでいる。
日の射しはじめた7時過ぎ、簡易温度計では約マイナス15℃前後だ・・・。



カラリと乾いて澄んだ大気のおかげと、周辺の雪山へ朝日が射したことで、ぐるりと見渡す風景が見事で素晴らしい・・・。



これだけ冷え込んでも、風さえなければそれほど冷たさを感じない。

      

スノーシューを履いて周囲のトレッキングへと出る。
以前より考えていたもう一つの野営場所を確認しに行って見る。

うむ!次はココだな・・・。
この周辺も素晴らしい積雪状況で、屋根の上の雪の積もり具合からみて既に2mほどは降り積もっているんだろう。



木の枝にも氷の華が咲いた。



最高の野営情景。
もっとこの寒冷な場所に佇んで過ごして居たいものだ、野営情緒を味わい続けていたい・・・。

     

激しく名残惜しいのだ・・・。
後髪を引かれる思いでザックに荷をまとめる。

車に戻り着き、何はさておきエンジンスタート。
セル一発、問題なく始動。
スノーシューやウェア類を脱いで車内を整理し終えると、ゆっくり車を発車させて雪道の坂を下りていった。



この後、麓の町に下りて行くとようやく車内の暖房が効き始めた。
道沿いの気温表示ではマイナス6℃となっていて外にも出てみたが、さっきまでの野営場所での緊張感は感じられない。
なんだか・・・マイナス一桁ってのは暖かいんだ、と感じた一瞬だった。

さて今回の極寒野営は、まさに冒頭の年末年始に思い巡らせたように、まさに的を得たような素晴らしい野営模様となった。
冬には冬の、寒く凍えた季節にはそれ相応に沿ったやり方が心地好いものです。

また来ようと思う・・・。


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END




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